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仏教と象の深いつながり:日本の象牙工芸の歴史と美しさ

今日は象と仏教のつながりについてお話ししたいと思います。
象と聞いて、まず思い浮かべるのはその大きな体と優雅な姿かもしれません。
しかし、象は仏教においても非常に重要な存在であり、多くの意味を持っています。

仏教の象徴としての象

仏教では、象は力強さ、知恵、穏やかさの象徴とされています。
仏教の開祖である釈迦(シャカ)の母である摩耶夫人が、釈迦を身籠る際に六牙の白象が胎内に入る夢を見たという説話もあります。
つまりこの白い象は、仏教において神聖な存在とされ、悟りを開いた偉大な者の到来を表すものとされています。
また、大乗仏教において重要な菩薩の一尊でもある普賢菩薩の乗り物も白象であり、白象は縁起の良いもの、仏法を守護するものと考えられていました。

このように、象が仏教において深い意味を持つ一方で、日本では象牙もまた重要な役割を果たしてきました。
象牙は、象の持つ神聖なイメージと結びつき、さまざまな工芸品として歴史的に用いられてきました。

象牙産業の歴史

次に象牙産業の歴史についてご紹介します。

日本に残る最古の象牙を用いた細工としては、奈良時代に使用されたといわれる正倉院に残されている「紅牙撥鏤尺(こうげばちるのしゃく)」という、赤く染めた象牙に、撥鏤(撥ね彫り)の技法を用いて文様を表わした尺(ものさし)があります。
また『日本書紀』にも「象牙(きさのき)」という言葉が登場します。

さらに、平安時代中期に作られた辞書『和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』には「似水牛、大耳長鼻、眼細牙長者也」と具体的な姿が説明されています。
これはおそらく、経典や仏像などを通じて大陸から伝わったと考えられます。

江戸時代の象牙工芸

江戸時代になると、象牙の工芸品はさらに発展し、多くの芸術品が作られるようになりました。
特に「根付(ねつけ)」という小さな装飾品は、その美しさと技巧から非常に高く評価されました。
根付は印籠や巾着を帯に取り付けるための道具であり、そのデザインは非常に多様で芸術性に富んでいました。

元禄3年(1690年)に刊行された「人倫訓蒙図彙(じんりんくんもうずい)」という風俗辞典的な絵本には「角細工(つのざいく)」が寺町通りその他に住み、種々の象牙製品を作るとあります。
また同書には象牙を鋸で切断する図も示され、三味線の撥、琴柱等に混じって、輪切り・丸環形(まるわがた)・六角形・小粒の断片等が描かれています。
この図は掛け軸として現在、たばこと塩の博物館に所蔵されています。

象牙を使った根付は、その芸術性の高さから国内外の美術館でも収蔵され、大英博物館やメトロポリタン美術館などでも展示されています。
このように、日本の象牙工芸は世界中で評価されています。

明治時代以降の象牙の利用

明治時代になると洋装が普及し、根付の使用は減少しましたが、象牙を使った彫刻技術はその後も発展を続けました。
特に印章や邦楽器、美術品としての象牙製品は現在でも広く使用されています。

まとめ

仏教における象は、その力強さと知恵、穏やかさを象徴する重要な存在です。
日本でも古くから象牙が使われ、特に江戸時代にはその芸術性が高く評価されました。
象牙の工芸品は今もなお、多くの人々に愛され続けています。

仏教と象、そして象牙の工芸品の歴史を通じて、私たちは日本の文化の深さと美しさを再認識することができます。
これからもこの伝統が大切に守られていくことを願っています。


参考文献


 

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