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東京都で開催していた「象牙取引規制に関する有識者会議報告書」について

2022年3月29日に、東京都で開催された「第7回象牙取引規制に関する有識者会議」での報告書が発表されました。
そちらを引用しつつ、象牙に関してまとめてみたいと思います。

 

東京都で開催していた「象牙取引規制に関する有識者会議報告書」について

「象牙取引規制に関する有識者会議」とは

そもそもこの「象牙取引規制に関する有識者会議」とは何かというところから、改めてご紹介しておきます。
まずは東京都政策企画局のサイトの中で発表されている、今回の象牙取引規制に関する有識者会議報告書から引用したいと思います。

 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、「東京2020大会」という。)時の訪日外国人による象牙の違法な海外持出等への懸念など、象牙取引に関する国際的な関心の高まりを受け、東京都(以下、「都」という。)は、国内取引規制の検証と国際都市である東京がなすべき対策等を検討するため、令和2(2020)年1月10日に「象牙取引規制に関する有識者会議(以下、「有識者会議」という。)」を設置した。

つまり国(環境省・経済産業省)とは別に、国際都市である東京都が独自に開催している象牙に関する有識者会議となります。
また報告書に位置付けとしてこのような記載になっています。

本報告書は、今後都が取組む象牙取引の適正化に資するため、令和2(2020)年1月から令和4(2022)年3月にかけて有識者会議で整理した、象牙取引を巡る現状と課題、象牙取引適正化に向けた対策などの論点を整理したものである。

個人的な感想としては、適正化に資するための報告書のタイトルになぜ「規制」の文言が入っているのか?
そもそも規制ありきの偏った議論をしようとしているのではないか?
との疑念がありつつ、読み進めてみました。

また現在の象牙取引における世界や国内の情勢に関してご興味があれば、象牙取引規制に関する有識者会議報告書をご一読ください。

 

東京象牙美術工芸協同組合の意見

次に私たち日本国内で象牙を取り扱っている事業者の立ち位置を述べておきます。
東京象牙美術工芸協同組合の意見が、一番わかりやすいので、同報告書P14を引用します。

‣ 象牙は代替できないエコな天然資源。その伝統工芸技術は江戸時代から大切に受け継がれてきた。悪しきは、象牙の取引や需要そのものではなく、過度な需要が引き起こすゾウの密猟と違法取引であり、法令順守と正しい情報発信が必要である。
‣ 法令を遵守する事業者が扱う象牙製品は、密猟由来の象牙を利用することはなく、現在のアフリカゾウの密猟につながらない。違法な海外持出等の違法取引には断固反対。

悪いのは象牙の取引ではなく密猟と違法取引であり、また象牙の取扱と密猟には関係がないと、感情論ではなく正しい情報に基づいた意見であることがわかります。
同報告書にはこれに対して、経済産業省の発表もありますので、次にご紹介します。

 

国会での議論

象牙取引を巡る課題について、国会での議論も行われています。
その中での、現、経済産業副大臣の細田健一さんの意見もP11に掲載されています。

※ 一方、平成30(2018)年第196回国会(衆議院環境委員会)において、「象牙をゾウの生態系が再生可能な範囲で利用し、その利益で保護につなげていく『サステーナブルユース』という日本の立場を堅持すべき」という趣旨の指摘があった。

と、東京象牙美術工芸協同組合の意見を支持する内容になっています。

ちなみにサスティナブルユース(持続的な利用)とは、いろいろな用途に活かされる貴重な天然資源や野生生物を絶滅から守るため、長期展望で無理のない有効利用をしていくことです。
またなぜサスティナブルユースが自然環境や野生生物を保護するのに必要かというと、野生生物の利用を全面禁止にすると価値を失って、逆に乱開発や密猟の原因になってしまうからです。
そのためルールに則って、地域へ経済的利益を与えながら自然を保護していく「サスティナブルユース」が一番効果的ということになります。

 

象牙取引規制に関する有識者会議 座長の意見

最後に報告書のまとめにもなる、P19象牙取引規制に関する有識者会議座長でもある阪口功さんの意見の最終箇所を引用いたします。

象牙の国際的な違法取引の防止に貢献し、地球規模での持続可能性に寄与していってほしい。

こちらも、サスティナブルユースの理念に基づいて進めていくこととなっています。

 

アフリカゾウの個体数の状況

それらを踏まえる根拠となるデータも開示されています。
P3に個体数の状況が記載されています。

南部アフリカ地域では、安定した個体数のゾウが生息している。

データは同ページを引用しています。

 

取引再開に係る議論

また産出国でもある南部アフリカでは、取引再開に関してどのように考えているのかの記載がP5にあります。

ゾウの保全に成功している南部アフリカ諸国は、象牙の国際取引によりゾウの保全や地域社会発展のための資金を獲得することを期待。

つまり原産国も、サスティナブルユースに賛成していることがわかります。

 

最後に

今回の報告書で、中立の立場である地方自治体の東京都が、ワシントン条約会議での指摘事項、国会での審議内容などにも触れています。
その上で、象牙を取り扱う事業者、行政、そして象牙の取り引きを禁止もしくは反対する団体等、さまざまな立場にも偏ることなく、事実に基づく情報を元に、「象牙取引を巡る現状と課題、象牙取引適正化に向けた対策などの論点」が整理されていました。

さらに興味を持たれましたら、象牙取引規制に関する有識者会議報告書をご一読ください。

 

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